京極夏彦
 
公私混同著者紹介:
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妖怪シリーズ (講談社:文庫)

姑獲鳥の夏
(うぶめのなつ)

東京・雑司ヶ谷の医院に奇怪な噂が流れる。
娘は二十箇月も身籠ったままで、その夫は密室から失踪したという。
文士・関口や探偵・榎木津らの推理を超え噂は意外な結末へ。
(カバーより)

京極堂シリーズ一作目の作品です。
私は「魍魎の匣」を最初に読んでしまいました。
正直「魍魎の匣」はさほど感じるものが無かったので、気安く読み始めてしまいました。
ナメてた。。途中までメチャクチャ恐かったです。。
恐かったので夜通し読みました。。
個人的ホラーのお時間が過ぎ去った後に、密室の謎が開かされてタイミングバッチリでした。
その謎というかネタというかが、凄いと思いましたね。
このネタを成立させてしまう筆力が凄い。
前半にちょっと京極堂講座みたいなのがあるのですが、そこで長いけどちょっと面白い話が展開されるのですね。
それをほへ〜んと読んでる間に、世界観が刷り込まれているんですね。
恐るべし京極夏彦。
「陰摩羅鬼の瑕」まで読んだ現在で、一番印象的なのはこの「姑獲鳥の夏」です。


魍魎の匣
(もうりょうのはこ)

箱を祀る奇妙な霊能者。
箱詰めにされた少女たちの四肢。
そして巨大な箱型の建物―
箱を巡る虚妄が美少女転落事件とバラバラ殺人事件を結ぶ。
探偵・榎木津、文士・関口、刑事・木場らがみな事件に関わり京極堂の元へ。
果たして憑物は落とせるのか!?
(カバーより)

初京極夏彦。
京極夏彦は厚い故知っていて、厚い故読んでいませんでした。
書店で見ていただければ解りますが、通常、上下どころか上中下に分かれててもおかしく無いですよ。
通勤で読んでたのですが、とても重かったです。持ち難いし。
で、この「魍魎の匣」が一番評価が高そうなので最初に選んで見ました。
個人的には、、、うーん、、、
とにかく前半が退屈で仕方ありませんでした。
この魍魎に限ったことではないのですが、人物の内面描写がしつこい気がします。
同じ事を別の言葉で4回ぐらい説明すると言うか。
後半はバラバラだった出来事が綺麗に収束してきて面白かったです。
しかしまぁ気持ち悪いこと考えますね。


凶骨の夢
(きょうこつのゆめ)

夫を四度殺した女、朱美。
極度の強迫観念に脅える元精神科医、降旗。
神を信じ得ぬ牧師、白丘。
夢と現実の縺れに悩む三人の前に怪事件が続発する。
海に漂う金色の髑髏、山中での集団自決。
遊民・伊佐間、文士・関口、刑事・木場らも見守るなか、京極堂は憑物を落とせるのか?
(カバーより)

カバーの説明、間違ってはいないけど勘違いすると思う。
少なくとも私は勘違いした。今更ながら、少し説明。
上記の事件がいっぺんに起きる訳ではなくて、ある物は過去である物は現在の、そして全てが夢か現か判然としない意識の中で。
夢と現実の狭間で迷う三人の男女の話。
ここらで京極堂シリーズの主な登場人物を紹介すると、
基本語り部となるのは小説家の関口先生です。売れない小説家で鬱病持ち。
ふらっとアッチの世界に行ってしまいそうになるので危険です。
事件を解決するのは京極堂こと中禅寺秋彦。古書店・京極堂の主。で、あだ名が京極堂。
副業で憑物落としをやってます。
京極堂は事件の謎を綺麗に解体してしまうことで、
奇怪な事件で病んでしまった人たちの憑物を落とす、のですね。
で、京極堂と愉快な仲間たちとして他に、刑事の木場さん。
探偵の榎木津さんがいます。
榎木津は探偵ですが、探偵小説の探偵を想像すると大変なことになります。
「凶骨の夢」の頃には、京極シリーズのペースというものに慣れてきて、展開の遅さもさほど気にならなくなってきました。
ネタは、、読んでるときにはさほど感じなかったですが、
今、ここの登場人物たちの状態を考えると怖いですねぇ。
朱美さんについての描写は流石に上手いと思いました。


鉄鼠の檻
(てっそのおり)

忽然と出現した修行僧の屍、山中駆ける振袖の童女、埋没した「経蔵」・・・・・・。
箱根に起きる奇怪な事象に魅入られた者
―骨董屋・今川、老医師・久遠寺、作家・関口らの眼前で仏弟子たち次々と無残に殺されていく。
謎の巨刹=明慧寺に封じ込まれた動機と猛執に、さしもの京極堂が苦闘する
(カバーより)

上の説明見ると、いかにも探偵小説風味、というかマンガ的でさえある。
そのせいかなぁ。面白さという意味ではこの「鉄鼠の檻」が今のところ一番(「陰摩羅鬼の瑕」現在)面白かったです。
京極堂シリーズは事件の内容よりもむしろ京極堂の無駄語りが面白いです。いや、無駄ではないんだが。
今回は妖怪解説より、禅に関する件が面白かったですね。この事件の謎にも関係してるし。
京極堂シリーズの面白さの一つが、事件の関連性というのが一般知識では探れない場合があること。
ミステリでそれはどうなのか。って話なんですが、そういうことって多々あると思うのですよ。
専門知識とかだけでなく、地域限定の常識みたいなものもありますよね。
そういう自分だけじゃ一生考えても分からない様な方向から筋道が立っていく。
余りに非一般すぎて逆に気持ちいい。
しかも、いきなりそこに行くのではなく、事前に上記のような京極堂講座があってある程度下地が出来ているのですね。
山中に張られた結界。内部で巻き起こる異様な出来事。日本のどの宗派にも属さない謎の禅寺。ああ、素敵。
あ、結界、の捕らえ方も面白いと思いました。
そうそう、車中、奥さんにからかわれて黙っちゃう京極堂も必見。


絡新婦の理
(じょろうぐものことわり)

当然、僕の動きも読み込まれているのだろうな――
二つの事件は京極堂をしてかく言わしめた。
房総の富豪、織作家創設の女学校に拠る美貌の堕天使と、血塗られた鑿をふるう目潰し魔。
連続殺人は八方に張り巡らされた蜘蛛の巣となって刑事・木場らを幻惑し、絡め取る。
中心に陣取るのは誰か?
(カバーより)

後ろの部分と思われるものが始めに来ている構成のせいで、登場人物が出揃った時点で中心人物が判ってしまうという嬉しくない展開に。
最近こういうの良く見かけますが、大抵しょぼい演出効果(山場操作)ぐらいの意味しか無い気がします。
どうせやるならソコにやっただけの重要性を持たせて欲しいです。
残念ながら今回それを感じ取ることは出来ませんでした。
話も木場さんの登場シーンが多く残念。木場さんはグダグダ考えた挙句それをほっぽり出すので余り好きではありません。
なんていうか自分の嫌な部分を見せられてる感じで。私の場合ふっきれもしないのですが。
話も結構暗いし。上記のようなせいで女郎蜘蛛にあたる人物も解ってしまっていたので最後の怒涛の寄りも楽しめませんでした。
面白かった点は、この事件の構造は蜘蛛の巣に例えているのですが、しっかり阿弥陀式に中心に向かっていくのが見えたところですかね。
一つのステージを満たさないと、次(内側)、に進めず、また一旦入ってしまうと中心が判らない。
説得力を持たせるのが難しそうですが、結構うまく出来ていると思います。



塗仏の宴 -宴の支度-
塗仏の宴 -宴の始末-
(ぬりぼとけのうたげ)

「知りたいですか」。郷土史家を名乗る男は囁く。
「知り――たいです」。答えた男女は己を失い、昏き境へと連れ去られた。
非常時下、大量殺戮の果てに伊豆山中の集落が消えたとの奇怪な噂。
敗戦後、簇出した東洋風の胡乱な集団六つ。
十五年を経て宴の支度は整い、京極堂を誘い出す計は成る。
(カバーより)

ボスキャラ登場。なのか?
最初の「ぬっぺっぽう」の辺りまでは最高に面白かったです。
人々の記憶から抹消された村。不老不死のくんほう様。
まるでこれにて終幕、みたく色々な人が顔見世してます。
「今昔続百鬼―雲」で主役を張る多々良先生なんかも登場。
「絡新婦の理」のあの人も出てきますしねぇ。出てきますが、、、
なにやら盛り沢山な感じですが、終わりで肩透かしを食らった感が拭えません。
ボスキャラと書きましたが、本当にマンガみたいな終わりでした。
終わってないというか。
一つの山ではあったんでしょうが、私的に後半(というか関口先生の出番が消えた時点から)はだらだらでしたね。


陰摩羅鬼の瑕
(おんもらきのきず)

ノベルス版で読了。

(2006/09/17 記)



百鬼夜行―陰
(ひゃっきやこう いん)

未読

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妖怪シリーズ (講談社:ノベルス)

陰摩羅鬼の瑕
(おんもらきのきず)

白樺湖半に聳える洋館「鳥の城」は、主の五度目の婚礼を控えていた。
過去の花嫁は何者かの手によって悉く初夜に命を奪われているという。
花嫁を守るよう依頼された探偵・榎木津礼二郎は、小説家・関口巽と館を訪れる。
ただ困惑する小説家をよそに、館の住人達の前で探偵は叫んだ。
――おお、そこに人殺しがいる。
(カバーより)

「塗仏の宴」に続く、京極堂シリーズの長編。
「塗仏の宴」の後なので、関口先生がボロボロです。
関口先生がボロボロじゃないときなんて滅多にないのですが、この時は度合いが違います。
私的には、消えた村を探しに行っちゃうぐらいの関口先生が好きなので、残念でした。
話は、、、京極堂ならではではないでしょうか。
しかし、この作品が初読だったとして、読者は納得するのでしょうかね。
「鉄鼠の檻」でも思ったのですが、「姑獲鳥の夏」を読んでることを前提にした理屈がかなりある気がします。
「鉄鼠の檻」では、久遠寺先生必殺の「そういうこともあるんじゃよ」でかなり省略してるし。。
読んでて真相はかなり早く判ってしまったのが残念ですが、「絡新婦の理」「塗仏の宴」で妙に上がっていたステージが元に戻ったので良かったです。
本編とはあまり関係ありませんが、この本に横溝正史が登場します。そして関口先生とお話します。
そう京極堂シリーズは戦後直後ぐらいが舞台なのです。
横溝正史生誕百年記念で何人かの作家が横溝正史モノの何らかを書いたのですが、京極氏は「陰摩羅鬼の瑕」の作中人物として横溝正史を登場させたのですね。
正史ファンも必見です。



邪魅の雫
(じゃみのしずく)

「殺してやろう」「死のうかな」「殺したよ」「殺されて仕舞いました」「俺は人殺しなんだ」「死んだのか」「――自首してください」「死ねばお終いなのだ」「ひとごろしは報いを受けねばならない」
昭和二十八年夏。江戸川、大磯、平塚と連鎖するかのように毒殺死体が次々と。警察も手を拱く中、ついにあの男が登場する!「邪なことをすると――死ぬよ」
(カバーより)

ミステリ小説としてやっていることは物凄いと思ったが、面白かったかと聞かれれば、う〜ん、となってしまいます。
既存のネタです。が、そのネタの最大値を示したと思います。
コレを読んだ多くの読者に納得させようと思えば、そりゃあコレぐらい必要かもしれぬ。
連続と思しき毒殺事件が多発するが、事件個々の繋がりがまるで見えてこない。しかし一方で確実に一つに繋がらなければおかしい証拠が存在しているのである。
全ての事件を包括した絵図面を引こうとすれば、とんでもなく大きな話になり、しかしやはり個々の事件を見るとそれほどのものは見られない。
物語は複数の人物の視点で描かれていく、同じ事件の違った側面から映し出していく。一般個人が、または警察としての組織が、把握できるのはあくまで部分。事件の一側面なのだ。
人々は自分が見聞きした情報、そしてそれまでの人生の得た世界観で、事件を捉えていく。しかしそれぞれ得ている情報はあくまで部分に過ぎない。
事件を完全に俯瞰・操作できるものは誰一人存在しない。それは、、、、でさえ。。。
ということなので、いつもどおり物凄く分厚い本になっています。相変わらずしつこいぐらい一つのことをべったり描写するので疲れます。。
榎木津の印象的なエピソードも絡んでて、そういう意味では必見かと思いますが、ストーリー自体はあまり面白くなかったという印象。
いつもの妖怪講座もありませんでした。今回はそういうものも物語全体で語っているように思います。
今回は京極堂、事件の解体と、あとは常識面の話しか無かったので物足りませんでした。今回あったような著作や批評についてなんか言えば、こんなことわざわざ言わないといけないんだなぁという内容でした。
まぁ物語全体で表現しようとしたことを、作家と著作や批評について、の部分で集約して見せたとも取れますね。いや、そうなのでしょう。
もちろんあの場はこの作品で言う、憑き物落としとはどういうものか、のお浚いであるのもモチロンです。そのままの意味でも受け取っていいはずです。
小説のこうした一つのエピソードの多重性、複線は大好きです。ミステリではそれが腕の見せ所の一つでもあるから好きです。
取り止めが無くなってしまいましたが、私が思うところ、技術面・論理面で評価する人には傑作、ストーリーを追う人、京極堂による妖怪講座的な非一般知識解説が好きな人にはイマイチな作品では無いでしょうか。

ちなみに今回のノベルスは、カバー違いの地域限定版が出ています。事件の舞台である大磯・平塚地区の一部書店では別Verが卸されました。左画像下。
ネット販売もされるようですが重版からみたいですね。比較的楽に行けるところに住んでたので、古本屋巡りも兼ねて買いにいってみました。
2006/09/30現在、物凄くいっぱいありました。こ、こんなに売れるん? 買取品じゃないだろうから、ほとぼりが冷めればネットにも初版が乗って来るかもしれませんね。それとも全国各地から熱心な京極堂ファンが結集して。。。
詳細は、公式ページ講談社のページに載っています。

(2006/10/02 読了)
(2006/10/02 記)



探偵小説
百器徒然袋―雨

救いようの無い八方塞がりの状況も、国際的な無理難題も、判断不能な怪現象も、全てを完全粉砕する男。
ご存知、探偵・榎木津礼二郎!
「下僕」の関口、益田、今川、伊佐間を引き連れて、さらには京極堂・中善寺秋彦さえ引きずり出して、快刀乱麻の大暴れ!
不可能状況を打開する力技が炸裂する三本の中編。
(カバーより)

『鳴釜』『瓶長』『山嵐』の三本。
京極堂シリーズとは違い、かなりノリの良い話になってます。
ネタが暗くても明るくなるというか。榎木津の「薔薇十字探偵社」のお話です。
関口先生の代わりを務めるのは、図面引きの本島さん。『鳴釜』の事件で榎木津探偵に行き着いてしまったのが運のツキ。
榎木津は、「京極堂曰く、人の記憶が見える」というムチャクチャな能力を持っています。
なのでどうしたって普通の探偵モノのようには行かない。
行ってないのですが、これ探偵小説なんですなぁ。不思議と。
榎木津と京極堂という最強タッグで事件を解決粉砕。
単純に面白いです。京極堂シリーズ読んでるとそのギャップで更に楽しめます。


探偵小説
百器徒然袋―風

調査も捜査も推理もしない。ただ真相あるのみ!
眉目秀麗、腕力最強、天下無敵の薔薇十字探偵・榎木津礼二郎が関わる事件は、必ず即解決するという。
探偵を陥れようと、「下僕」の益田や本島らに仕掛けられた巧妙な罠。
榎木津は完全粉砕できるのか?
天才の行動力が炸裂する『五徳猫』『雲外鏡』『面霊気』の3編。
(カバーより)

雨に続き二作目。
もう完全にこなれて来て、ノリが楽しい楽しい。
榎木津と京極堂の最強(ある意味最悪)タッグが大暴れ。
なんだかんだ言いながらノリノリな京極堂が面白すぎる。
得意の弁舌でテキトーな即興かまして周りを慌てさせたり、しかもとんでもないネタ(変な偽名など)で真面目な話を展開したり。
『雲外鏡』などでは敵まで道化染みてくるというメチャクチャ振り。
学生時代、関口先生を二人で引っ張りまわして色々大暴れだったらしいですが、きっとこんな感じだったんでしょうねぇ。。



今昔続百鬼―雲
多々良先生行状記

河童に噛み殺された男。物忌みの村を徘徊する怪人。絶対負けない賭博師。神隠しに遭う即身仏――
はたしてそれは全部妖怪の仕業なのか? 断言するのは全身妖怪研究家・多々良勝五郎大先生!
戦後まもなく各地で発生する怪事件に次々巻き込まれる妖怪馬鹿の大冒険。「黒衣の男」も友情出演!

沼田君にも、多々良先生にも、嫌いではないけれど、愛着は持てませんでした。
でも話の筋やタッチは好きなので楽しめました。久々に京極節を堪能。
妖怪シリーズ読みたびに、石燕の画図百鬼夜行が欲しくなります。国書刊行会め。高い本ばかり出しおって。


その他 (集英社)

どすこい(安)

地響きがする――と思って戴きたい。
ベストセラーの数々を「でぶ」一色に塗りつぶす奇怪なお笑いの書、『どすこい(仮)』がついにノベルスに!
(カバーより)

地響きがする――と思って戴きたい。で始まる、
「四十七人の力士」
「パラサイト・デブ」
「すべてがデブになる」
「土俵(リング)・でぶせん」
「脂鬼」
「理油(意味不明)」
「ウロボロスの基礎代謝」
からなる力士・デブをキーワードにした一人連作小説。
題名で判るとおり有名作品のパロディ、、、ってほどパロってない。
兎に角、馬鹿な小説。
「四十七人の力士」では吉良邸に47人の力士が討ち入り(土俵入り?)するという、語るだにアホな内容。
ひたすらくだらない。
しっかし凄いですよ。こんなのも書けちゃうんですねぇ。。吹き出してしまって通勤で読めなかったです。
私は「四十七人の力士」「すべてがデブになる」が特に好きです。
そうそうこれは(安)ですが(仮)として大きな本で出てます。俗に言う重たい方。
「すべてがデブになる」の作中に登場する、しりあがり寿先生のマンガが両者で違います。
片方しか見てない人は要チェック。
「デブ」という単語そのものに嫌悪感を持っちゃう人にはダメですが、オバカなのが好きな人にはオススメ。